経営者保証に関するガイドラインについて教えてください
弁護士の山上です。今回は経営者保証に関するガイドラインについてのお悩みです。
Q1 「経営者保証に関するガイドライン」とはどのようなものですか。
A1 経営者保証に関するガイドライン(以下「経営者保証ガイドライン」といいます。)とは、中小企業における経営者保証に関する契約時及び履行時等における中小企業、経営者及び金融機関による対応について定めた自主的自立的な準則です。ここでいう経営者保証というのは、会社(中小企業)の借入について経営者個人が会社の連帯保証人となることをいいます。経営者保証ガイドラインは、中小企業・経営者・金融機関の自主的なルールですので、法的な拘束力はありませんが、自発的に遵守することが求められています。
Q2 会社で金融機関からの借入をしようとしています。会社の代表取締役は、必ず個人保証をしなければいけないのでしょうか。
A2 経営者保証ガイドラインでは、まず、主たる債務者が経営者保証を提供することなしに資金調達することを希望する場合には、以下の3要件が将来に亘って充足する体制が整備されていることが必要になります。
①資産の所有やお金のやりとりに関して、法人と経営者が明確に区分・分離されている
②財務基盤の強化されており、法人のみの資産や収益力で返済が可能である
③財務状況を正確に把握しており、金融機関に対し適時適切に財務情報が開示されていること
また、経営者保証ガイドラインにおいて、金融機関は、以下のイ)からホ)の条件が将来に亘って充足すると見込まれるときは、会社の経営状況、資産使途、回収可能性を総合的に判断して、経営者保証を求めないことや経営者保証に代わる代替的な融資手法を検討すると規定されています。
イ)法人と経営者個人の資産・経理が明確に分離されている
ロ)法人と経営者の間の資金のやりとりが、社会通念上適切な範囲を超えない
ハ)法人のみの資産・収益力で借入返済が可能と判断し得る
ニ)法人から適時適切に財務情報等が提供されている
ホ)経営者等から十分な物的担保の提供がある
そのため、上記①から③、及び、イ)からホ)の要件を充足する場合には、金融機関に対して、経営者の個人保証なしに会社に融資してもらえるよう交渉する余地があります。
Q3 金融機関からの会社借入に対してすでに経営者としての個人保証をしていますが、個人保証を外すことはできないのでしょうか。
A3 経営者保証ガイドラインに則り、上記A2に記載した要件が充足された場合には、金融機関に対しすでに提供している経営者の個人保証を見直すことができる可能性があります。
Q4 事業承継を考えている場合、金融機関からの会社借入について、後継者は当然に前経営者と個人保証を引き継がなければいけないのでしょうか。
A4 経営者による個人保証の存在により、後継者の確保が難しくなり、事業承継の阻害要因となることがあります。そこで、令和元年12月に「事業承継時に焦点を当てた『経営者保証に関するガイドライン』の特則」が定められました。そこで、上記A2で列記した要件を充足する場合には後継者には個人保証が求められない可能性があります。また上記A2記載の要件を充足しない場合でも、金融機関が、以下の点を考慮して、後継者の個人保証を不要と判断した場合には、後継者に個人保証が求められない可能性があります。
❶主たる債務者(会社)との継続的なリレーションとそれに基づく事業性評価や事業承継計画、事業計画の内容、成長可能性を考慮すること
❷規律付けの観点から対象債権者に対する報告義務等を条件とする停止条件付保証債務等の代替的な融資方法を活用すること
❸外部専門家や公的支援機関による検証や支援を受け、上記A2記載の要件充足に向けて改善に取り組んでいる主たる債務者(会社)については、検証結果や改善計画の内容と実現見通しを考慮すること
❹中小企業活性化協議会によるガイドライン第4項(2)をふまえた確認をうけた中小企業については、その確認結果を十分に踏まえること
弁護士法人ウィンクルム法律事務所では認定支援機関である弁護士により上記❸の会社の経営改善計画策定支援と伴走支援もおこなっております。
Q5 会社がやむを得ず破産や特別清算を行う場合、会社の金融機関からの借入について個人保証をしていた経営者個人も必ず破産の手続きをしなければいけないでしょうか。
A5 会社が破産や特別清算をする場面でも、一定の条件を満たせば、経営者保証ガイドライン、裁判所による特定調停手続、中小企業活性化協議会の手続等を用いて、経営者が個人の破産を回避できる場合があります。その場合、経営者保証ガイドラインに則り、経営者の保証債務の整理を行いますが、以下の資産は保証人の手元に残る可能性があります。
1.自由財産(99万円)
2.金融機関が事業再生等の早期着手により法人からの回収見込額が増加した場合、自由財産に加えて「一定期間の生活費(雇用保険の考え方を参考に約100万円~360万円)」を経営者に残すことを検討
3.金融機関は、「華美でない自宅」について、経営者の収入に見合った分割弁済をする等により、経営者が自宅に住み続けられるよう検討
4.保証債務履行時点の資産で返済し切れない保証債務の残額は、原則として免除する
なお、この場合保証人が債務整理を行った事実その他の債務整理に関連する情報は、信用情報登録機関に報告・登録されません。
経営者保証ガイドラインは、強制力はないため、債権者である金融機関の同意が必要になります。弁護士法人ウィンクルム法律事務所では、経営者保証ガイドラインの要件に該当するかのチェック、経営者保証を外すことについての金融機関の同意を経るための経営改善計画策定及び伴走支援や金融機関との交渉、会社の破産の際に経営者保証ガイドラインに則った経営者の個人の保証債務の整理支援などを行っております。経営者保証に関するお悩みがあればぜひご相談ください。
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