【債権回収】逮捕もあり得る財産開示手続

1 「紙ペラ」にすぎない判決

・交通事故で重度の障害を負い、加害者に対する損害賠償請求訴訟を提起し、勝訴判決を得た!
 …しかし、加害者は無保険で多額の賠償金を得ることはできなかった。
・「迷惑をかけない」と言われ大金を貸したが、返済されなかったので、貸金返還訴訟を提起し、勝訴判決を得た!
 …しかし、現預金のない借主は返済してこない。

このように、訴訟それ自体に勝訴しても、被告(債務者)から債権を回収できないということは珍しくはありません。
「民事執行法」は、勝訴判決を紙ペラにしないために、被告(債務者)の財産を明らかにすれば「強制執行」をする制度を用意しています。
しかし、強制執行をすることができるのは、「被告(債務者)の財産を明らかにした」ときです。
では、強制執行ができなかったら泣き寝入りなのでしょうか?

2 「紙ペラ」を実現するための財産開示手続

被告(債務者)の財産が明らかではない場合、民事執行法上の財産開示手続をとることが考えられます。
財産開示手続は、金銭支払を目的とする確定判決を得ている場合において、被告(債務者)に対し、自らの財産の内容を明らかにするよう裁判所に出頭と説明を求める手続です。

●民事執行法
(財産開示期日)
第199条 第1項
開示義務者(略)は、財産開示期日に出頭し、債務者の財産(略)について陳述しなければならない。

財産開示手続に呼び出されたのに出頭しない場合、従来は、過料という行政罰を課せられるにすぎませんでした。
しかし、実効性が乏しいため、令和元年に次のように、「懲役刑」(改正刑法施行後は拘禁刑)が新設されました。

●民事執行法
(陳述等拒絶の罪)
第213条 次の各号のいずれかに該当する者は、六月以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。
第5項 執行裁判所の呼出しを受けた財産開示期日において、正当な理由なく、出頭せず、又は宣誓を拒んだ開示義務者

実際に、財産開示手続に出頭せずに、逮捕される例も出ています。
日本経済新聞電子版「慰謝料を支払わない相手への「財産開示手続き」利用7倍に」
URL:https://www.nikkei.com/article/DGXZQODG084AM0Y1A300C2000000/

3 債権者も債務者も弁護士に相談を!

このように、強制執行手続は、従来より強化されています。
不良債権で貸倒損失を計上しようとしている債権者も、逆に、強制執行を恐れている債務者も、どちらの立場であっても、まずは弁護士の法律相談で今後の対応を考えてみてはいかがでしょうか?

投稿者プロフィール

弁護士安井 健馬
弁護士安井 健馬
弁護士安井健馬(ウィンクルム法律事務所 兵庫県弁護士会所属)
神戸三宮にある相続・中小企業法務・M&Aに注力した法律事務所で弁護士をしています。

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