【フィクションと法律】雇った以上は(『ポケット・モンスター』より)

今回のブログでは、平成6年より放映されているアニメ『ポケット・モンスター』シリーズから、物語で敵役を担う「ロケット団」に着目してみたい。

ロケット団は、ボスの「サカキ」を頂点として、「珍しいポケモンや強いポケモンを集めて最強のポケモン軍団を作り、世界征服をする」ことを目的とする悪の組織である。

ポケモンシリーズでは、ボスのサカキよりも下っ端のムサシとコジロウの方が頻繁に出てくる。

ムサシとコジロウは、主人公サトシの相棒ピカチュウを狙って、あらゆる手段を使う。
大きな網を使い、サンマ漁のようピカチュウとサトシをまさに一網打尽にすることもあった。

このように一網打尽にする行為が逮捕監禁罪にあたり、民法上、不法行為に該当することは疑いがないであろう(ピカチュウについては、動物愛護法違反にあたるのであろうか?)。

サトシは、今までなんとか逃れることができている。
しかし、当時10歳であった我が子を旅に送り出したサトシのママとしては、我が子を危険な目に合わせたロケット団に対して、慰謝料の支払いを求めたいであろう。

だが、ムサシとコジロウは、なぜかいつもお金がなさそうである。
ムサシとコジロウに対して、損害賠償を求めても実際に支払われることはなさそうである。

では、サトシ、ひいてはその保護者であるサトシのママは泣き寝入りなのか。

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サトシのママは、「ロケット団」あるいはその代表「サカキ」に対して、我が子が被った損害の賠償を求めることはできないのであろうか。

民法には、次のような定めがある。

(使用者等の責任)
第715条
1 ある事業のために他人を使用する者は、被用者がその事業の執行について第三者に加えた損害を賠償する責任を負う。ただし、使用者が被用者の選任及びその事業の監督について相当の注意をしたとき、又は相当の注意をしても損害が生ずべきであったときは、この限りでない。
※2項以下 略

使用者責任と呼ばれるものである。
外回りで従業員が社用車を運転していて交通事故を起こした場合に、会社も被害者に対し損害賠償責任を負うのが典型例である。
これが認められるためには、「事業の執行について」という事業執行性の要件が必要となる。

では、ロケット団はどうであろう。

違法な活動でも利益を上げている以上、「事業」に当たるというのが最高裁の立場である。
ムサシとコジロウは常にロケット団のロゴマーク「R」のプリントされた制服を着用している。
ムサシとコジロウは、何か成果を出すとサカキからお褒めの言葉を貰っており、ロケット団本部に利益が帰属している。

たとえ下っ端であっても、ムサシとコジロウの行為は、ロケット団の「事業の執行について」行った活動であるとみられる可能性が高い。

ロケット団はムサシとコジロウを団員として雇った以上は、サトシに対して使用者責任を免れることは難しいであろう。